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ふくろうの筆箱

不思議・妖怪・幽霊系の短編小説

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河童にコーラを飲ましたところ。3

震える携帯を手に、片手で鞄の中をまさぐる。が、いくら探してもメリーさんはいなかった。とりあえず携帯に出よう。きっと彼女だ。

「もしもし」

「私メリーさん。今、川の前にいるの。」

え。川の前?というと、この暗い林のなかにある川のことだろうか。あの、ばしゃばしゃと不気味に響いていた音の主の…私の動揺をよそに、また激しく髪が揺れる。父さん妖気です。

「来い…ってこと?」

「私メリーさん。今、川の前にいるの。」

電話口の彼女は同じことを繰り返す。初めて彼女にあった時と同じだ。

「わかった。今いくね。」

私は彼女にそういうと、電話を切った。彼女がこういう行動に出たということは、余程の理由があるのだろう。今までこんなことはただの一度もなかった。きっと彼女は、私に何かを伝えたくて、そして何かをしてほしいのだ。私は川の音が響く林の奥を見る。川沿いにいるとなると、彼女の身も心配だ。早く行ってあげなければ。


林に足を踏み入れると、小さな虫が体に纏わり付いてきた。それを手で払いながら、川の音のするほうへ進む。川沿いともなると蚊も多いんだろうなぁ。


暗い闇の中を少し進むと、川が見えてきた。川と行っても川幅2mほどの小さな川だ。深さも1m無いだろう。私は月明かりをたよりに、小さな石がなだらかに堆積した川原へ出た。激しい水の音が耳を覆う。川の前というと、この辺りなのだろうか。この暗闇の中、あの小さな体を探すのは至難の業だ。

ばしゃ

不意に音が響く。まるで大きな石を川に投げ込んだかのような激しい音だった。反射的にそちらへ目を向ける。そこには、大きな石の上に立っているメリーさんが、月明かりに照らされていた。安心して緊張が解ける。川に落ちたりしていなくてよかった。


足場の悪い中、転ばないように注意しながらメリーさんのもとへ急ぐ。まだ音の主も解らないままなので周りにも注意を向けなければ。私はメリーさんを優しく握り、抱きしめるように胸に当てる。よかった。さて、ここには何があるのだろう?メリーさんがここに来た理由を探さねば。




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