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ふくろうの筆箱

不思議・妖怪・幽霊系の短編小説

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歌い手と踊り手

それは大きな大きな木だった。
太く立派な幹と、ごつごつとした木肌は
随分と長い間この地に根を下ろしていたことを示していた。

いくつにも分かれた枝は一つ一つが長く、電線の上まで伸びている。
そこから広がった青々とした葉は電線を覆い、日の光を遮って
きらきらとした木漏れ日を地面に落としていた。







風が吹き、木が揺れる。
その瞬間、葉擦れの音が世界を支配した。
時に激しく、時に優しく、木は揺れ、ざわざわと歌う。
その歌に気づいた木漏れ日たちが、静かに、ゆらゆらと踊り出した。

ざわざわ。
ゆらゆら。

光と音の、美しいハーモニー。
天然のミュージカルは優しく物語を展開させ
落ちてくる葉っぱは最高の演出となる。
私は心の中で、惜しみない拍手を送った。

散歩の中で不意に見つけた、自然の音楽。
彼らの優しい歌声は
ウォークマンでは決して聴けないものなのだ。

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