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ふくろうの筆箱

不思議・妖怪・幽霊系の短編小説

その子は私だった

祖母は人形作りが趣味だった。
フェルトで出来たふわふわとしたものや、綿を布でくるんだものなど
たまの連休に家族で遊びに行ったときに見せてもらったのだけれど
それはそれは感心するものだった。

その祖母が亡くなった時に不意に思い出したのが
小さなころ、私をモデルにした人形があった気がしたのだ。
それが今どこにあるかはわからなかったのだが
その人形が存在することだけは
はっきりと思い出せたのだった。





それから何年か経ったある日
父から聞いた。

いつもリビングに飾ってあった、優しい表情のこの人形。
この人形こそが
私だったのだ。

気づくはずもない。似てないのだもの。
私はこんなに優しい顔はしていないし。こんな服も着ない。
というより
この人形のその表情は、いつもにこにことしていた祖母を連想させるものがあった。

それからというもの、私はその子の写真をプロフィール写真に使うことが多くなった。

この子のように優しい人でありたい。
この子のようにいつも、上品に笑っていたい。
そんな思いを込めて。
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