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ふくろうの筆箱

不思議・妖怪・幽霊系の短編小説

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河童にコーラを飲ましたところ。4



しかし、この暗闇の中で音の主を探すのは骨が折れそうだ。しかも、それがどういう外見をしているのか、想像もつかない。誰かが助けを求めているのか、はたまたメリーさんのような人外のものなのか。私は辺りを見回す。なんの変哲もない、小石が堆積した川原だ。メリーさんもここまで連れてきたのだから、何かしらヒントをくれればいいのに。

ばしゃ
 
不意に大きな水音が響き、私は反射的にそちらへ目を向ける。川の中で何か跳ねたのだろうか。目を凝らすが、特に変わったところはないように見える。私は意を決して、川の近くへ寄ってみることにした。まさに一寸先は闇。水面が月明かりに反射しているので川は確認できるが、例え人が倒れていたとしても、見つけられるかどうか。少し進むと、足に水の感触があった。うーん。これ以上進むと危ない気がする。私が川の中の捜索を諦めて、踵を返そうとしたその時だった。

がしっ

何者かが、私の右足首を強く掴み、川の方へ引っ張る。驚いて声を出すことすら出来なかった私は、その強い力に負けて、その場に倒れ込んだ。

え!?

叫んだつもりだったのが、恐怖からなのか、喉の奥で、蚊の鳴くほど小さなの声しか出せなかった。手はなおも私を川へ引きずり込もうとしている。その強い力で。

強い力で‥…。
ん?

あまりに驚いて倒れ込んでしまったけれど、手が私を引っ張る力は、さほど強くないことに気づいた。というか、弱い。引っ張っていることには違いないのだけれど、冷静になってみると、それは本当に微弱で弱々しい力だった。少なくとも、この力では私を川の中へ引きずり込むのは無理だろう。自分の足を掴んだ手に目を向ける。小さくて、まるで子供のような手だ。しかし、人間のそれとは随分と違う。指の数も少ないし、小さな水かきのようなものが付いている。これはどうみても人外のものだろう。


さて、どうしたものか。その手をもう片方の足で蹴れば、振りほどくことは容易く成せるだろう。でも、この手の主の姿が気になるし、メリーさんがわざわざ、私を危険に合わせるためだけにここに誘導したとは考えにくい。いや、呪いの人形だから当たり前なのかしら。いや、彼女に限ってそんなことはない。はずだ。きっと。

私は意を決してその場で立ち上がると、深呼吸。そして、その弱々しい人外の手に、そろりそろりと手を伸ばす。
そして、その手首を力強くガシッと掴み

そぉぉぉぉぉいッッッ!!!

と思い切り引っ張った。


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