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ふくろうの筆箱

不思議・妖怪・幽霊系の短編小説

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河童にコーラを飲ましたところ。2



やっとの思いで、コンビニにつく。自動ドアが開くと、涼しく快適な風が私を包んだ。あぁ、やっぱりクーラーは最高だ!

あの後、背中で水の音を聞きながら足早に道を歩いていたのだけれど、数分置きに、明らかに風ではない何かが髪を揺らしてくる。メリーさんが何かを伝えようとしているのは解るのだけれど、その内容が、どうにも解らない。そうこうしているうちにコンビニへと着いてしまった。


とりあえず、商品を選ぼう。涼みたいのでできるだけ時間をかけて。帰り道もあの蒸し暑い道を通ることを考えると、飲み水は必須だ。アイスも買おう。チョコのやつ。ペットボトル飲料を鞄の中に入れてメリーさんを冷やすことも忘れない。まぁ人形が暑さを感じるのかどうかは不明だけれど。後は、私の好きな炭酸飲料とポテチ。そんなところだろうか。レジへ並ぶ。うおぉ。意外とお金を使ってしまった。我ながら計画性のない出費だ。


幸せに包まれつつも、またあの熱帯夜の道を歩かなければならないのだと考えるとひどく憂鬱になる。あの水の音も気になるし。まぁ、道を変えてもよいのだけれどね。ただ、もう一つの道のほうは本当に真っ暗な林道で、この時間だと文字通り、一寸先は闇。街灯も少ないので懐中電灯もなしで歩くには一苦労だろう。


足取り重くも、私はコンビニを後にする。自動ドアから出ると、熱風が私を襲う。うがぁー。あつーいー。あっという間に体から汗が噴き出してくる。袋からペットボトルを取り出し、一口飲んだ。いろはすうめぇー。そしてそのペットボトルを、鞄の中のメリーさんに当たるように仕舞う。これでOK。私は暗い帰路を急いだ。


しばらく歩くと、またあの川沿いに出た。ふぁさっと、さっそく髪が揺れる。やはりここには何かがあるのだろう。まだ水の音は聴こえていないにしろ、髪が揺れたということは、どうやらあの水の主はまだここにいるらしい。歩くスピードを速める。巻き込まれるのはごめんだ。などと考えていると、またふぁさっと激しく髪が揺れる。わかったよ。早く帰ろうね。心の中でメリーさんに話しかける。幾度も幾度も髪を揺らされ、額がくすぐったい。


これ、他の人から見たらどうなのだろう。『うわ、なにあの人、髪の毛揺れまくってる。きもーい。』ってことにならないだろうか。いや、それよりこの不自然な揺れ方に驚いて見て見ぬ振りをするのかしら。というかカツラだと疑われたりしないだろうか。それは嫌だ。


と馬鹿なことを考えていた、その時だった。
ブーン。ブーン。
鞄の中の携帯が鳴る。驚いた私は足を止め、携帯を取り出す。
表示は非通知。もう一時近い。会社の人間だとも友達だとも考えづらい。
となると..。メリーさん?

鞄の中に手を入れ、メリーさんに触れる。
触れ...る。
あれ。

いない!?!?


河童にコーラを飲ましたところ。3


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河童にコーラを飲ましたところ。1




うおぉぉぉ。何だこの暑さは。
部屋から出て、コンビニへ向けて歩き出すと、あっという間に汗だくになってしまった。全く、夏は苦手だ。べたべたと体に纏わり付く湿気に顔をしかめる。メリーさんは大丈夫だろうか。鞄の中は暑そうだけれど。


コンビニまでの道中、川の流れている林の脇を通る。この場所は風情があって好きだ。川の流れる音と、所々から聴こえる蝉の鳴き声。林の中を進んで、川の近くへ寄ると、今の時期だったら蛍を見ることが出来る。私のお気に入りの場所だ。暑いし蚊が多いので滅多に行かないけれど。


時間はもうそろそろ十二時。田舎なので人通りはない。街灯は少ないし、見通しも悪いので女の一人歩きとなると少し不安になる場所ではある。まぁ、林の反対側には疎らにではあるが住宅もあるし、そして鞄の中には呪いの人形であるメリーさんもいる。護ってくれるかは不明だけれど。いや、私は彼女に呪われている身なのだけれど。


ばしゃっと川の方で、音がした。魚でも跳ねたのだろうか?気にせずに歩く。
ばしゃばしゃ。
随分とアグレッシブな魚だ。発情期か?気にせずに進む。
その時、ふぁさっと私の髪が、激しく揺れた。風もないのに。となると
「メリーさん?」

鞄の中に声をかける。どうしたのだろう。彼女はよほどのことがない限り、私に意思表示をすることはない。不満がある時だとか、私が何かを忘れている時だとか。まして、外でなんて、初めてのことだった。私は鞄の中に手をいれて、彼女を外に出し、その可憐な顔を覗き込む

「どうしたの?」

「....」

彼女はいつもと変わらず、無表情で虚空を見つめている。うーん。喋ってくれれば楽なのだけれどなぁ。でも、何かしらの理由があるはずだ。私は注意深く周りを見渡す。
ばしゃ。
また川の方から音がした。目を向ける。この音が原因だろうか。ただの魚だと思っていたのだけれど...。
ばしゃ。ばしゃ。
これまでよりも激しい音が2回響いた。思わず体が跳ねる。と同時に。髪が激しく揺れた。やはり彼女が何かを伝えたがっている。言いようのない恐怖感。音の主は魚ではないのかしら....?
不安になった私は、コンビニへの道を急ぐことにした。

背後からは、まだ水の音がばしゃばしゃと、まるで私を責めるかのように、夜の闇に響いていた。




河童にコーラを飲ましたところ。2

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河童にコーラを飲ましたところ。 プロローグ


※この話からでも大丈夫ですが
一応、中編の『私メリーさん。今あなたの(ry)』の続きです。



 「...死ぬ」

暑すぎる。
七月。夏本番に入り、空気が湿気で重たくなったこの頃。暑いのが苦手な私は毎夜毎夜クーラーを二時間後に止まるように設定してから寝ていた。そうしないと暑くて眠れないのだ。そして朝は汗だくで茹だりながら起きて、何をするよりも先にクーラーをつける。それほどに、私はクーラーを愛していた。それほどに私は彼(?)を愛していたのに…。
二日前のことだ。いつものように会社から帰宅してリモコンのボタンを押したのだけれど

....。

反応なし。何度押しても反応がない。私は絶望した。一応インターネットで解決策を調べたのだけれど、結局、彼(?)は息を吹き返すことはなかった。次の日の朝、大家さんに事情を話したのだけれど修理は三日後くらいになってしまうとのこと。それから二日間、クーラーなしで生活をしているのだけれど、いやはや辛い。窓を開けても、入ってくるのはじめじめとした生ぬるい空気だけで、たまに申し訳程度の風が入ってきたとしても、おせじにも涼しいとは言いがたい、そよそよとした弱々しいものだった。


その夜は、一度は床についたもののそのあまりの暑さになかなか寝付くことが出来ず一度起きてコンビニに行くことにしたのだ。明日には修理が入って、私が会社から入ってくる頃には、彼は涼しげな顔で私を迎えてくれることだろう。それまでの辛抱だ。


棚の上の人形に「言ってきます」と小さく言うと踵を返し、その狭く暑苦しい空間を後に...。
ブーン。ブーンと携帯が鳴る。たまにこういうことがある。まぁ慣れたものだ。表示は非通知。臆せずに私は出る。

「もしもし」

「.....」

無言。私は振り返り、棚の上の人形、綺麗な髪に優雅な帽子、ふわふわなドレスを着たフランス人形に話しかける。

「メリーさんも一緒にいく?」

もちろん返事はない。人形だもの。その代わりに、ふぁさっと、私の髪の毛が揺れる。風もないのに。それが彼女の意思表示。YESの場合はこうなる。なんという萌えキャラ。このツンデレめ。メリーさんも暑いのだろう。こんなドレスを着ているのだしね。


メリーさんという名前のこの子は、都市伝説で有名なフランス人形だ。まぁ呪いの人形...というと怖い感じもするが、結局、意思のある人形ということだ。彼女を拾ってから三ヶ月ほど経つけれど、まるで家族が一人増えたような感覚だ。「おはよう」にも「おやすみ」にも、彼女は私の髪を揺らして返事をしてくれる。言葉ではないとしても、返事が返ってくるというのは嬉しいものだ。決して、お人形相手に話しかけている痛い女子(27)ではない。
そう、決して。
ハハッ。

私は彼女をひょいと持ち上げると、鞄に入れる。とりあえず早くコンビニに行きたい。あのキンキンに冷えた幸せな空間に行きたい。メリーさんも同じはずだ。


『河童にコーラを飲ましたところ。』1



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電気で動く、私です。2

朝から降り続いた雨がようやく止んだ。公園の入り口には時折、終電で帰ってきたのであろう疲れきった顔の会社員が、重い足取りで帰路についているのが見えていた。

当時の私は生まれて二年目。まだこの仕事にも慣れていなかった。失敗という失敗はしたことがなかったがどうにも、ボタンを押されてから焦ってしまうことがあった。コーヒーはどこだったか、リンゴジュースはどこだったかと。まぁ焦るようなことではないのだけれど、『お客さんが待っている』と思うと、思うように頭が回らないのだ。


木から落ちてくる雫が、私の固い頭の上でトントンと一定のリズムを刻んでいた。雨の日、私はそれに耳を傾けるのが好きだ。


この時間ともなると、わざわざ公園に入って飲み物を買う人間なんていない。たまに物好きな会社員が、私からあたたかいコーヒーを買って、公園のベンチに座ってぼぅっとしていることがあるが、今日はあいにくの雨だ。そんな人間はいないだろう。
雫のリズムの中でそんなことを考えているとふと公園の入り口に、こちらへ来る人影が見えた。変わった人間がいたものだ。


私は身構える。お客さんが自分の前に来たら電気をパッとつける。仕事の基本だ。ばしゃばしゃと、しめった土の上を歩く音が近づいてくる。そこで、驚くべきことに気づいた。それは、女の子だったのだ。身長140弱ほどだろうか。小学四年前後に見える。
公園の時計を見る。十二時を少し回ったところだろうか。子どもの出歩きにしては、あまりに遅い時間だ。しかも目を引いたのは、その子が傘を持っていない。という点だ。雨は上がっているとはいえ、またいつ降るかもわからないというのに。


その子は私の前に立つ。私は慌てて電気をつけた。ブーンという音とともに、彼女の顔が明かりに照らされる。幼い顔立ちに、真っすぐに切りそろえた前髪。どこにでもいそうな女の子だ。その子はポケットをまさぐると、じゃらじゃらと小銭を取り出した。そして私を見る。私をというか飲み物のサンプルを。しばらく迷った後小銭を入れ、上の方にあった温かいミルクティーのボタンを、とんと押す。私はそれを確認すると、ミルクティーをがしゃんと下に落とした。その子はそれを取り出すと、キャップを回し、一口。

ぷはぁ

口から白い息が、湯気のように空に上る。幸せそうな顔。寒空の下で温かい飲み物を飲んだ時の、人間の、満たされたような、幸せそうな顔は好きだ。その子はキャップを締め、まるで宝物を持つかのようにそれを両手で持った。そしてどこへいくでもなく、私の前でぼぅっと夜空を眺め始めた。私もつられて空を仰ぐ。


綺麗な冬の星空。北斗七星が瞬いている。この時期の、ここから見る星空は最高だ。私の仲間の話をたまに聞くことがあるのだけれど、建物のなかの、人通りの少ない廊下などに配置されている者も少なくないと聞く。それを聞いた時、私は自分のこの環境に感謝をしたものだ。
春は花。
夏は虫。
秋は枯葉で
冬は星。
四季を感じることが出来るこの公園は、すくなくとも暗い廊下よりは幸せだろう。

....ん?

嗚咽が聴こえた。視線を移すと、その子は星空を見ながら泣いていた。ミルクティーを両手で大事そうに持ちながら、大粒の涙を流している。理由なんて知る由もないが、余程の理由があるのだろう。我慢していたものが全部湧き出てきているかのようなすべてを吐き出すような、そんな泣き声だった。
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『私メリーさん。今あなたの後ろn (ry) 』 6 完



「もしもし」

と声をかける。

「私メリーさん。今あなたの前にいるの。」

聞いたことのない新しいパターンだ。確かに、彼女は私の前にいる。私は構わず彼女に問いかけることにした。

「来てくれてありがとう。どうして私のところへ来てくれたの?」

「.....」

相変わらず、問いには答えようとしない。どうしたものか。暖簾に腕押しとはこのことだ。

「....私...メリー....さん」

「?」

次に出た彼女の言葉は、まるで言い淀んでいるかのように途切れ途切れになっていた。迷いがあるかのような、そんな印象を受ける。思わず彼女の顔を覗き込むが、相変わらず可憐で無表情なフランス人形のままだった。

「どうしたの?」

「わた...シ...メリー...さン」

明らかに先ほどまでと様子がおかしい。凄く苦しそう。私にはまるで、嗚咽を漏らしながら言葉を絞り出しているかのように聴こえた。

「無理しないでいいんだよ?来てくれてありがとう」

「ワ...たし....」

また同じ言葉を続けるのかと思ったそのとき。不意に電話がプツッと切れた。そして、それと同時に彼女は、ぱたんっと床に倒れた。私は驚いて思わず体が跳ねる。そして静寂。先ほどまでの重苦しい空気が晴れ、いつもの家に戻った気がした。少なくとも、彼女から発せられる独特の殺気のようなものは、倒れた彼女からは感じなかった。まるでただの、人形になってしまったかのようだった。


恐る恐る、彼女に手を伸ばして、腰のあたりを優しく握ってみる。あら細い。羨ましい。急に動いたりしないだろうなぁ...。と顔を強ばらせながら、持ち上げる。あぁ、こんなに軽かったんだ。顔を見てみる。闇の中で見る彼女の顔は、陰っていて気味が悪かったがこうして明かりの下で、自分の腕の中に治まっている彼女を見ると、可愛くて、美しくて、なにか愛着のようなものが湧き出てくるのを感じた。きっと、これがこの人形なのだろう。
つまりは、呪いの人形。


言葉にしづらい不思議な魅力と、まるで生きているかのような雰囲気を纏った彼女。人を引き寄せてしまう彼女は、今までどんな人生を送ってきたのだろうか。ただ、一つ確かなことは次は私の番。だと言うことだろう。


これでこの話は終わり。その後、彼女から電話がかかってくることはないし、彼女が動きだすことも、今のところない。でも私は彼女に『呪われたまま』なのだ。私が彼女を捨てれば、きっと彼女はまた同じ行動に出るのだろう。彼女は今でも、私の家のリビングの棚の上にじぃっと座っている。不意に、彼女に背を向けると底知れぬ不安と刺すような視線を感じることがあるが。それは彼女が私を見張っている。ということなのかもしれない。



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