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ふくろうの筆箱

不思議・妖怪・幽霊系の短編小説

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『私メリーさん。今あなたの後ろn (ry)』 4



殺されるのはごめんだ。だがそのサイトには、対処法などは書いていない。が、私はどこか安心していた。幽霊の類いだとすると、なんとでもなる。相手が人形だとしても、つまりは九十九神(物に憑く神様)というわけだろう。話したことなど、いくらでもある。私はしばらく考えた後一つの結論に至った。

『『メリーさんを招待し、仲良くなろう』』

そうすれば殺されることなどあるはずがない。うん。これしかない。
作戦としてはこうだ。どうせ彼女(?)は家の前まで来て『私メリーさん。今あなたの後ろにいるの』という電話をしてくるのだろう。ならどうすればいいか。そう。『後ろ』をなくせば良いのだ。壁に寄りかかってビールと柿ピーをついばみながらバラエティを見てゲラゲラ笑っていれば良い。彼女(?)もその余裕っぷりを見たら驚くはずだ。
そこからはもう、普段通り。幽霊と話すなど日常茶飯事だ。友達と話すようなノリでいけば、きっと解り合える!!そんなことを考えていとると

ブーン。ブーン。

と携帯が鳴った。だが、綿密な(?)作戦を立てた私に迷いはない。先ほどより堂々とした口調で電話に出る。

「はい。佐伯です」

「私メリーさん。今あなたの家の前にいるの」

「はーい。待ってるねー」

私はこう返事をした。文字通りだ。私は彼女を待っている。彼女は返事をせず、プチッと電話を切った。だが、私の声を聴いてから電話を切ったはずだ。


 さて、次の電話は『部屋の前』そしてその次は『あなたの後ろ』なのだろう。つまり次の電話がくる前までにおもてなしの準備をして壁に背を着けていなければいけない。猶予はだいたい10分といったところか。


..おもてなしと言っても、私の部屋には柿ピーとビールしかない。メリーさんは、きっと未成年だろう。未成年どころか、幼い子どもなのだろうか?でも幽霊というよりは、物に憑く神『九十九神』なのだろうし。神様って子どもとか関係あるのかしら。でも、もし子どもだとしたら

『メリーさん』

と呼ぶよりは

『メリーちゃん』

と呼ぶべきなのだろうか。私もう27だし。
....。
でも子どもだとしたら柿ピーは使える。子どもはピーナッツ好きだ。柿の種は微妙だけれど。そして大人だとしても、ビールと柿ピーがあれば無敵だ。そう。この布陣は、仮に彼女が『メリーさん』だとしても、はたまた『メリーちゃん』だとしても完璧である。うし。
だが、念には念をだ。私は冷蔵庫を開け、食べかけのチョコレートを皿に入れ、麦茶とコップ2つを用意した。と、その時

ブーン。ブーン

来た。メリーさん(もしくはメリーちゃん)だ。私は電話を取る。

「私メリーさん。今あなたの部屋の前にいるの。」

「はーい。大丈夫だよー。入っておいでー。」

プチッ

なんだろう。この、旧知の友人を待っているかのような余裕は。自分でもその余裕に驚きつつ、少し急いで柿ピー他を乗せた御盆を壁際に置き、その隣に私は座る。背をぴったりと壁につけ、これから始まるであろう、メリーさんとの対話に備えた。ゆっくりとビールを飲み、柿の種を頬張る。そしてゆっくりと深呼吸。


さて、準備は万端だ。
いつでも来るがいい!!!!


『私メリーさん。今あなたの後ろn(ry) 5』



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『私メリーさん。今あなたの後ろn (ry) 』 3



「私メリーさん。今ゴミ捨て場にいるの」

確かに、電話の主はそう言った。メリーさん??そんな知り合いはいない。てか外人??頭が混乱する。とりあえず私は

「あの...人違いではないですか...??」

と返した。すると相手は

「.....」

無言。不思議に思い、再度話しかける。
「あn「私メリーさん。今ゴミ捨て場にいるの」

私の言葉を遮って、電話の主は同じ言葉を吐いた。そして
プツ

と、唐突に電話は切れたのだった。随分と、不気味な電話だ。メリーさんという名前は聞覚えがない。知り合いにもいないはずだ。そして妙に明るい口調に、言いようのない違和感があった。なによりも、ゴミ捨て場にいる??訳が分からない。...まぁ考えても仕方ない。私は後味の悪さを拭えないままだったが、ただのいたずら電話だろうと思い込むことにした。ビールを一口、喉に注ぐ。たまらなく美味い苦みが口の中に広がった。そして音量を戻そうと、テレビのリモコンに手を伸ばす。

ブーン。ブーン。

再び、不気味な音が部屋の中に響いた。なに、リモコン持とうとすると鳴る仕掛けなの?携帯を開く。

非通知。

嫌な予感を拭いつつ、再度、通話ボタンを押す。

「...もしもし。佐伯です」

「私メリーさん。今、タバコ屋さんの角にいるの」

電話は先ほどと同じ声で、言ったかと思うと

プツッ

と切れた。タバコ屋さんの角。私の家から20メートルほどの場所にそれはあった。もしそれのことだとしたら。近くにいるのだろうか…?いよいよ、不気味な話だ。そして一つの可能性に気づいた。これはもしや、幽霊のたぐいなのかもしれない。と。もしそうだとしたら、安心だ。私はてっきり、気味の悪いいたずら電話なのだと思っていた。相手は日本語ペッラペラの外人か、もしくは自分のことを『メリー』なるロリッ子だと勘違いしている痛い人。そのどちらかだとしたらひどく気分は悪いが。幽霊だとしたら、慣れたものだ。軽くあしらってしまえば良い。


私は立ち上がり、鞄からノートパソコンを取り出し、電源をつけた。そして検索ワードのところにカタカタと文字を打つ。『メリーさん』を検索にかけたのだ。グーグル先生お世話になります。


1,420,000件の検索結果。


なんという有名人!!!!検索結果には主に『怖い話』『都市伝説』などの言葉が並んでいた。その中の一つをクリックしてみる。重々しいBGMと、禍々しい壁紙。怖い話を前面に押し出しているサイトだ。そのサイトにはこう書いてあった。


メリーさんという人形を捨てた女の子のもとに一通の電話がくる。
私メリーさん。今ゴミ捨て場にいるの。
五分後
私メリーさん。今あなたのマンションの前にいるの。
さらに五分後
私メリーさん。今
あなたの後ろにいるの。

振り返った彼女は、殺されてしまう。
.....ん?
殺されるの!?!?!?


『私メリーさん。今あなたの後ろn(ry) 4』


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『私メリーさん。今あなたに後ろn (ry)』 2


金曜の夜。その日、会社から帰宅した私は、ビールを飲みながらテレビを見ていた。ほぼ下着のような姿でソファの上でにあぐらをかき、ビールと柿ピーついばみながらテレビを観ていた。今思うとかなり。なかなか凄い絵面だ。麻由美という可愛い名前とは裏腹にかなり男っぽい性格だ。と周りからは言われる。自分でもそう思う。


金曜の夜。明日はフリーなので早起きをする必要もない。ビバ金曜日。余裕に溢れた暇な時間ほど愛おしいものはない。私は少し酔いながら、それはもう幸せな時間を過ごしていた。


前述した通り、私は霊感が強い。怖い体験(私には怖くも何ともないのだけれど)もかなりの数を経験してきた上級者だ。なので、何かが『起こる』ときというのは、妙にざわざわと胸騒ぎがする。その時も、柿ピーをつまみにビールを愛でながらも、心のどこかで嫌な予感はしていた。気がする。


ブーン。ブーン。


携帯が震える。誰だろうか、こんな時間に電話なんて。時計を観ると十一時三十分。仕事の電話だろうか...。テレビの音量を下げて長年愛用しているボロボロのガラケーを開く。


非通知。


嫌な予感がする。胸騒ぎというか、違和感というか。その違和感が何なのかわからないけれど、とにかくその時、その電話には出たくないと、強く思った。しばらく出るか出まいかと問答をしていると、バイブレーションが止まってしまった。

(誰だったのだろう)

と不思議に思いながらも、緊急の連絡だとしたらもう一度掛かってくるはずだ。その時は出よう。
という結論に至って、テレビの音量を戻そうとリモコンに手を伸ばした時


ブーン。ブーン。


また、携帯が震えだした。手に取り、開く。また非通知だ。続けて二度。ということは、何か緊急の連絡なのかもしれない。アルコールで頭はほわほわとしているけれど、念のため仕事モードに切り替えよう。ゆっくり息を吸い、同じだけの時間をかけて吐く。そして通話ボタンを押した。

「はい。佐伯です」

「.....」

返事がない。ただの屍のy (ry。私はもう一度話しかけた。

「佐伯です。どちら様でしょうか?」

「.....」

いたずら電話だろうか?こんな時間に迷惑な話だ。諦めて電話を切ろうと、通話終了のボタンを押そうとした。その時だった。
「私メリーさん。今ゴミ捨て場にいるの」

とはっきりとした口調で、相手は言った。


続き 『私メリーさん。今あなたの後ろn(ry) 3』



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『私メリーさん。今あなたの後ろn (ry) 』


霊感があるというのは、どうにも不便だ。例えばこんなことがあった。夜道を歩いている時、不意に気配を感じて振り返る。そこには血まみれの老婆が...。こういう体験をした場合、普通だったら


A . 叫んで走って逃げる。 
B . 気絶する。


などのリアクションが正しいのだろう。でも、私はいかんせん、そういう体験に慣れてしまっている。子どもの頃からの霊感体質&霊媒体質なのだ。血だらけの老婆なんて、不謹慎ながら見慣れている。だがしかし、その老婆は私が怖がって何かしらのリアクションをすると思ってそういう行為に出ているのだ。つまりどうなるか。私の場合、振り返って血まみれの老婆がいたとしても

(あ、幽霊だ。うわ怖っ。)

で終わってしまうのだ。その老婆は私を怖がらせようとしているだけで私に直接的な用事はないので、驚かない私に、逆に驚いていた。


そして謎の時間が訪れる。


私はその老婆と見つめ合ったまま、動かない。そして老婆も私の予想外のリアクションに、ただただ呆然と立ち尽くしていた。そして

「あの...こんばんは」

私はそのあまりにシュールな時間に耐えきれずに、ごくフツーの挨拶をする。

「...えっと、こんばんは」

老婆も挨拶を返してくれた。わーい。
...完。

そして軽い会釈とともに踵を返すと、再び帰路についた。だって怖くないんだもん。慣れてるし。そしてその後は決まって、訳の分からない罪悪感に陥る。怖がらせたかったのなら、怖がってあげればよかったのだろうか。いや、でも怖くないものは怖くない。とっさに怖がる演技をするような器用さもない。それほどに私は、優麗に慣れてしまっている。


これはそんな私が体験した。ある意味『怖い話』である。


続き 『私メリーさん、今あなたの後ろn(ry) 2』




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電気で動く私です。





 風が吹き、木が揺れた。葉擦れの音がざわざわと、秋の夜空に響く。その音に誘われるように視線をあげると、木々の間から見事な北斗七星が見えた。秋から冬にかけてのこの時期、この公園から眺める夜空は、毎年変わらずに美しい。今はまだ枯れ葉が散っているけれど、もう少ししたらこの公園にも霜が降りはじめ、やがて雪が降るのだ。そんな四季折々の風情な光景を眺めるのが、私の唯一の楽しみだった。


公園の入り口のすぐ近くに、私は立っている。今まで、雨の日も風の日も雪の日も、たとえ嵐が来ようとも、私はそこに立ち続けた。一年目、二年目のうちは辛いと感じることもあったが、この仕事には喜びもある。


例えばひどい雨が降っていた冬の夜のことだ。凍えそうな寒さのなか、一人の女性が私に近づいてきたことがあった。声をかけたかったのだけれど、それは許されない。もしばれてしまったりしたら、私はきっと明日にでも公園を離れなければならないだろう。彼女は傘を支るのに苦戦しながらも、震える手で小銭入れを取り出すと、百円玉を一枚と十円玉を二枚、私の中に入れ、少し迷った後に、温かいコーヒーのボタンを押した。


私はそれを確認すると、自分の体の中から温かいコーヒーを、すとんと下に落とす。彼女は傘を必死に支えながら腰を屈め、それを私の中から取り出す。


それを手に取った時の彼女の顔。思わず声をかけたくなったが、ぐっと我慢した。寒くて冷たい、冬の雨の中、ようやくあたたかな温もりに触れることができて安堵しきった彼女の顔は、四年ほど経った今でもはっきりと思い出すことが出来る。その時は心から、本当に心から、この仕事に感謝したものだ。


さて前置きが長くなってしまった。そろそろ本題に移ろうと思う。私はこの六年間の人生の中で、ただの一度だけ、人と会話をしたことがある。...否、人と会話『してしまった』ことがある。
その話をしよう。


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